あと、試し具合のわかるエピソードとしてはこれが一番でしょうね。もらった『天才バカボン』の原稿を見たら、パパとママが濃厚なベッドシーンを、単にキスとかではなくて、パパが誘ってママがもじもじっとして、体までからんじゃったのが原稿の途中に入ってきてる。
実はこれ、正しい原稿が下に描いてあって、上に6コマぐらいノリで貼り付けてあったんです。それをはがせばちゃんと原稿になってるけど、紙の重なるスキマをわからないようにしてあった。
いやー、私は怒りましたよ。「持って帰れない」と。先生は演技ですから「この場面にこれがなければ今回のギャグはみんなに伝わらないんだ。わかんなかった?」と作品論をぶちかますわけです。私も理屈っぽく「じゃ最後のオチとどんな関連があるんですか? それより、こんなもの小中学生を読者とした雑誌に載せられない。父兄がどうとか、編集長がどうとかじゃなく、俺は絶対に載せない、本当に先生が載せたいんだったら、二人で話し合いましょう」と言いました。他の人が「まあまあ」と中に入ったりして、一時間ぐらいそんな状態。みなさんの演技はなかなかのもので、そんな暇があるなら原稿を描けばいいじゃないかと後で思いましたけど(笑)。
で、先生が「悪かった。実はこうなんだよ」ってネタを明かしてくれた。「だけど、おまえのことはよくわかった」と。頼りない編集者だったら「多分ダメだと思いますけど上司に相談します」って持って帰るかもしれない。自分のすべきことを忘れて人に託そうとしたりせず、私がこの雑誌に載せて読者が喜ぶはずがないと明快に答えたと。
でも、そんなこと言われたって、こっちは怒りがおさまらないわけですよ(笑)。そしたら先生がお詫びに今夜飲みに行こう、と初めて誘ってくれた。飲みに行ってサンデー担当の武居さんも一緒で、そのときになんとなくメンバーになったかな、という気がしました
”- コミックパーク特別企画〜赤塚ギャグの合奏者たち (via otsune)